日本遺産
「甲州の匠の源流・御嶽昇仙峡」
日本遺産に認定された昇仙峡を構成する文化財23件をご紹介させていただきます。
1.御嶽昇仙峡(甲府・甲斐)
長い年月をかけて荒川の流れに削り取られ、露出した巨岩や奇石、奇石群を擁し、希少な造形美を形成する日本有数の渓谷。長潭橋(ながとろばし)から仙娥滝(せんがたき)までは約5kmの遊歩道があり、マツやモミジなどの木々が織りなす四季折々の美しさが感じられる。国の特別名勝。
2.燕岩岩脈(甲府)
黒富士火山を構成する火山岩類の一つで、昇仙峡の形成に大きく関わっている。何万年も続いた火山活動の歴史を語りかけてくれる貴重な自然遺産。イワツバメが生息していたため名付けられた。国指定の天然記念物。
3.金峰山五丈岩(甲府)
標高2,599メートルの金峰山の山頂にある巨大な花崗岩で、金櫻神社の本宮。山頂からは水の信仰に関わる土馬や水晶玉が発見され、出土品は県立博物館に展示されている。山頂の美しい眺望は修験者のみならず多くの登山者や写真、文学愛好者も魅了している。
4.能面(甲府)
甲斐国の武将・武田勝頼が、金櫻神社に奉納したと伝えられる本社の宝物の一つ。金峰山の里宮として建立された金櫻神社が中世以降に武田氏をはじめ、領主や武将らの厚い加護を受けていたことを今に伝えている。県有形文化財。
5.住吉蒔絵手箱(すみよしまきえてばこ)、家紋散蒔絵手箱(かもんちらしまきえてばこ)(甲府)
住吉蒔絵手箱は、金櫻神社宝物帳に「武田信玄公母堂奉納」とされている本社の宝物の一つ。黒の漆地に豪華な金平薪(きんひらまき)の文様が細密に表現されている。家紋散蒔絵手箱も数種類の家紋が散らされ、武田家ゆかりのものと考えられている。県有形文化財。
6.筏散蒔絵鼓胴(いかだちらしまきえこどう)、武具散蒔絵鼓胴(ぶぐちらしまきえこどう)(甲府)
いずれも金櫻神社の宝物として能面と関連した優品。桃山蒔絵の技術と意匠が存分に発揮されている。金櫻神社に残る神宝帳によると、大鼓胴は弥佐衛門尉が作って武田勝頼が奉納。小鼓胴は阿古が造り、勝頼の弟に当たる仁科五郎信盛が奉納したとされる。県有形文化財。
7.金櫻神社大々神楽付面(かなざくらじんじゃだいだいかぐらつけたりめん)と衣装(甲府)
修験の地である金櫻神社に室町時代から奉納されている民俗芸能。二十六座には修験の所作が随所に認められ、金峰山麓に育まれた特異性を持つ。その舞は5月の例大祭で山々の桜、新緑の木々とともに人々を魅了している。甲府市無形民俗文化財。
8.旧金櫻神社石鳥居(甲斐)
1984年の発掘調査で発見された金櫻神社の一の鳥居で、鎌倉時代に建立された。現在は駐車場を確保できる甲斐市の総合公園内に、金峰山方向に遥拝できる形で移設された。県の有形文化財。
9.御嶽古道(亀沢)の石造物群(甲斐)
金峰山への参拝の道は、江戸時代に「御嶽九筋」と呼ばれる複数の御嶽道(古道)が整備された。甲斐市の亀沢はそのルートの一つ。金峰山五丈岩や金櫻神社、いにしえの人々の祈りをつなげた石造物群を、現在の道路脇に見ることができる。
10.御嶽古道(甲斐)
江戸時代の浮世絵師、歌川広重も御嶽古道を歩いて金櫻神社へ参詣し、その折に古道の奇石や景色を描いている。広重が絵にした風景を、この場所で今でも見ることができる。
11.旧羅漢寺の遺構(甲斐)
羅漢寺は大永年間(1521年〜1527年)に創建されたとされ、開基当時は羅漢寺山の中腹にあったが、慶安4(1651)年に火災で焼失。その後、新道開削により木造羅漢像とともに現在の場所に再建された。旧羅漢寺跡には当時の石組みなど、かつての遺構がある。
12.木造五百羅漢像(甲斐)
修験道場として開基された羅漢寺に伝わる羅漢像。寺は昇仙峡を象徴とする覚円峰を抱く山に建立され、山の名も羅漢寺山という。像はヒノキ材などを使った一木造りの立像で、154体が現存。表情がそれぞれ異なり、当初は美しい彩色が施されていた。県の有形文化財。
13.木造阿弥陀如来坐像(甲斐)
修験道場として開基された羅漢寺に伝わる阿弥陀如来。ヒノキ材を使った寄木造りで、高さは70cm。台座上に結跏趺坐(けっかふざ)している如来像。応永30(1423)年の在銘があり、室町時代の貴重な彫刻。県の有形文化財。
14.御嶽道祖神(甲府)
山岳信仰の御嶽道に点在する。道には道祖神のほか、道標や巡拝塔が立ち並び、歩くと江戸時代の巡礼気分を味わうことができる。
15.金櫻神社摂社・白山社(甲府)
金峰山の里宮として建立された金櫻神社の現存する数少ない摂社のひとつ。今も県内各地の白山崇敬者の拝礼を受ける。
16.長田円右衛門顕彰碑(甲府)
昇仙峡の呼称となる前、御嶽が広く世に知られるきっかけになった新道を開拓した人物。新道は山岳信仰者や文人画家らに親しまれ、功績が顕彰碑に刻まれた。
17.金櫻神社の御神宝(甲府)
この水晶玉の加工技術は京都で水晶玉加工販売をしていた玉屋の 番頭弥助が水晶買い付けの際、金櫻神社の神官達に伝授したといわれている。
18.塩沢寺地蔵堂(甲府)
湯村温泉郷にあり、天暦9(955)年に空也上人の開創と伝わる。古くから地域の信仰と観光の要所。毎年2月に開かれる厄除地蔵尊大祭は「厄地蔵さん」の愛称で親しまれている。国重要文化財。
19.湯谷神社(甲府)
弘法大師によって開湯された湯村温泉郷の前身、志麻の湯の時代から信仰される。温泉郷の守り神と称される湯谷大権現などをご神体とする。
20.平瀬浄水場登録文化財6件(甲府)
旧濾過池整水井、旧取水口門部、旧片山隧道下口、旧片山隧道上口、第2隧道上口、平瀬水源旧事務所。
昇仙峡の名水を浄化し、市民に送り届けてきた施設。遺構は隧道近代化の象徴として残る。旧事務所は隧道の歴史を学べる資料館になっている。いずれも国登録文化財。
21.黒平の能三番(のうさんば)(甲府)
かつて水晶が採掘された黒平地域に伝わる民俗芸能。住民が結婚や出産、新築などの祝いに披露してきた。鎌倉時代に都落ちした藤原房秀が伝えたとする説がある。県無形民族文化財。
22.炭焼窯跡(甲府)
黒平集落の人たちは昔、炭を焼いて険しい御嶽古道を通り、甲府で木炭を売った。マウントピア黒平から黒富士への山岳ルートをたどると、窯跡を見ることができる。
23.白輿(甲斐)
甲斐市の常説寺に伝わる屋形輿。順徳上皇が「承久の乱」によって佐渡に流された際、祈願のため越後寺泊から金櫻神社に勅使を遣わせ、奉納品を載せた物とされる。国重要文化財。